暗号資産・NFTによる寄付推進 2024年まとめ

暗号資産・NFTによる寄付推進 2024年まとめ

この記事は、暗号資産・NFTによる「安心・安全」な寄付を推進するためのメーリングリスト用の記事です。主にNPO団体関係者、各士業(税務・法律関係)の方々向けに配信を行っております。



※記事に関する、ご質問・ご意見・ご要望がございましたら、official@jweb3.or.jpまでお気軽にお願い致します。

今回は、2024年における政府機関、業界団体等の取り組みと公式発表をまとめました。

我が国において、認定NPO団体への「暗号資産やNFTを活用した寄付」について、これまでは法整備が追い付いていない状態でした。しかし、近年の需要の増大をうけ、政府・業界団体の尽力により急速に整備されつつあります。2025年も大きな動きが有ると予想されますので、随時まとめレポートを配信予定です。

※各資料の全文ダウンロードは参考URLから可能です。

政府機関による動き

自民党デジタル社会推進本部

自民党デジタル社会推進本部は、2024年度に「デジタル・ニッポン2024」と題した提言を取りまとめ、5月23日に岸田文雄総理に申し入れました。同5月21にはWEB3についての具体的方針を示した「web3ホワイトペーパー2024」を公表しました。

■当該資料中にて、暗号資産での寄付についても触れられ、以下の課題提起と提言が行われています。

課題(抜粋)

  • 現行税制の不明確さ、特に暗号資産での寄附が特定寄付金に該当するかが明確になっていないため、暗号資産での寄付を阻害する要因になっている。(注:1)
  • 現物寄附のみなし譲渡所得税等の非課税特例が無い事により、寄付によって含み益が課税対象となってしまう事から、寄付が阻害されている。

提言

  • 個人が寄付を行った場合は所得税法上の寄付金控除の適用対象となりうる事、法人が寄付を行った場合には、特別損金算入限度額に基づく損金算入の対象となり得ることを、通達やタックスアンサー等により公表することで明確化すべきである。
  • 現行の所得税法においては、個人が暗号資産を寄付した場合、暗号資産の時価を総収入金額に参入しなければならないとされているところ、租税特別措置法40条における現物寄附のみなし譲渡所得税等の非課税特例と同等の措置を暗号資産にも適用するべき。

資料ダウンロード:自民党デジタル社会推進本部まとめ

注1:暗号資産での寄付が寄付控除の対象となるかという件については、国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)令和6年12月20日改訂版」にて、対象となることが明記されました。

国税庁

国税庁におきましては、「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)令和6年12月20日改訂版」が示されました。暗号資産による寄附を行った場合の具体例が改めて記載されています。

  • 暗号資産でも寄付が可能。基本は寄附時点での時価が寄附金の額
  • 金額に大きな変動が無ければ、寄付受領日の前日の最終価格により計算した金額でもよい。
  • 認定NPO法人については税控除を受けられる。
  • 取得価格より寄付金の方が多い状態。つまり利益が出ている場合は、その分については「譲渡に係る利益」となる。

※下記は抜粋となります。FAQの全てをご覧になりたい方は参考リンクよりダウンロードしてください。

資料ダウンロード:国税庁発表まとめ

金融庁

金融庁におきましては2024年11月22日「業界団体との意見交換会において金融庁が提起した主な論点」と題するドキュメントが発表され、

  • セキュリティについての問題
  • マネーロンダリング、詐欺への対応の問題
  • ステーブルコインの運用について

などについて提起されており、特にステーブルコインについては今後暗号資産での寄付にも大きく関わってくると想定されます。

また「資金決済制度等に関するワーキンググループ」も2024年中に計6回開催されており、議論が深まっています。

資料ダウンロード:https://jweb3.or.jp/金融庁/

経済産業省、デジタル庁

経済産業省におきましては2022年7月に部局横断チームである「大臣官房Web3.0政策推進室」を立ち上げ、「Web3.0事業環境整備の考え方」という資料を公表しています。2024年は大きな発表は見受けられませんでした。

資料ダウンロード:https://jweb3.or.jp/経済産業省/

デジタル庁におきましては、2022年12月に「WEB3.0研究会報告書」を公表しています。2024年は大きな発表は見受けられませんでした。

資料ダウンロード: https://jweb3.or.jp/デジタル庁

業界団体の動き

暗号資産に関する税制改正要望2025年度

2024年7月19日に一般社団法人日本ブロックチェーン協会(JBA)により、「暗号資産に関する税制改正要望2025年度」が政府に提出されました。

2025 年度税制改正に関する要望書

続いて一般社団法人日本暗号資産取引業協会(JVCEA)、一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)より、「2025 年度税制改正に関する要望書」 が提出されました。

■一般社団法人日本ブロックチェーン協会の要望書の要約は以下となります。

要望1 申告分離課税・損失の繰越控除の導入

要望2 暗号資産同の交換時における課税の撤廃

要望3 暗号資産を寄附した際の税制の整備

要望4 特定譲渡制限付暗号資産の今後の直しの継続検討

■暗号資産での寄付に関しては、要望3にて以下の様に詳細が記載されています。

個人が暗号資産を寄附した場合、所得税法上の寄附控除の適対象となりうること。(注1)法人が暗号資産を寄附した場合には特別損算限度額までの損算の対象になりうること。以上を通達やガイドライン等において公表し明確化すること。また、個が暗号資産を寄附した場合、租税特別措置法40条における現物寄附のみなし譲渡所得税等の課税特例と同様、課税とすること。

注1:暗号資産での寄付が寄付控除の対象となるかという件については、国税庁12月20日の「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)令和6年12月20日改訂版」にて、対象となることが明記されました。

資料ダウンロード:業界団体の提言まとめ

海外の動き

寄付サイトの躍進

米国では、The Giving Blockをはじめとする、寄付サイトが躍進しました。The Giving Blockは年間200億円に迫る暗号資産での寄付を受け付けており、来年以降もさらなる成長が見込まれています。

■米国では、暗号資産を寄付することでキャピタルゲイン税を回避しつつ、寄付額全額を控除対象とすることが可能。

参考リンク(英語):https://thegivingblock.com/resources/crypto-taxes-and-crypto-donations/

暗号資産を即座に法定通貨(USDなど)に変換して価格変動リスクを回避する機能や、NFT(非代替性トークン)を介した寄付のサポートも提供しており、クリエイターや購入者がNFT販売収益の一部を寄付する仕組みも既に機能しています。

ドナー・アドバイズド・ファンド(DAF)

ドナーアドバイズドファンド(DAF)とは個人や法人から資産を預かった資産を積極運用し、その運用益を非営利団体に寄附することによって社会課題の解決を図る公益法人です。米国最大の運用者であるフィデリティ・チャリタブルは、暗号資産・非上場株式・現金など多様な資産を受け入れ、積極的に運用し18万超の非営利団体に寄付を行っています。DAF口座は税制の優遇措置もあり、今後の拡大が見込まれています。

参考リンク(引用元:野村資本研究所):ドナーアドバイズド・ファンド

ブロックチェーンを活用したDAF

米国では寄付サイトEndaoment(エンダウメント)の様に、ブロックチェーン上に構成された寄付プラットフォームも存在しています。イーサリアムチェーン上にて行われた寄付はEtherscan(資産の行く先を追跡できる機能)を通じて資金の流れを確認することができ、高い透明性を実現しています。

今後もブロックチェーン上のスマートコントラクト(自動契約機能)を活かした寄付プラットフォームは進化を遂げると予想されます。

また、DAO(管理者を持たない自律分散型組織)を活用した新しい寄付の形が生まれる可能性もあり注目です。

まとめ

12/20国税庁FAQにて、暗号資産での寄付が寄付金控除の対象であることがひとまず明記されました。今後、「現物寄附のみなし譲渡所得税等の非課税特例の適用対象」となるかどうかは2025年の大きな着目点であると言えます。

業界団体の動向を考察すると、日本版暗号資産ETFや、RWA(Real World Asset と呼ばれる現実資産をトークン化したもの。日本円ステーブルコイン等)の組成が強く意識されており、そのための下地であるセキュリティの強化が着々と進行している最中です。しかし、暗号資産ETFを実現するためには申告分離課税とセットでなければ整合性が無く、もしこの部分の税制改正が行われれば暗号資産業界にとっては大きな転機となる事が予想されます。

また、日本円ステーブルコインは非営利団体への寄付への活用が大きく期待される分野であり、今後の展開に注目です。

海外に目を向けると、米国では多彩な寄付~寄付控除までの流れがシームレスに行われており、効率化が進んでいます。今後もブロックチェーンを活用したDEX(分散型金融取引所)的なサイトが増え、より手軽な寄付が浸透すると予想します。

補足

現状、不明になっている点を幾つか列挙しました。

この他にも沢山あると思われますので、ご質問・疑問点がございましたら事務局 official@jweb3.or.jp までお知らせください。(可能であれば、共有させて頂きます)

  • NFTでの寄付は寄付金控除の対象となるか?その場合、寄付額はどのように評価するのか。
  • 認定NPO団体が、チャリティーNFTの配布を企画した場合、その寄付は寄付金控除の対象となるか。また、その際に配布するNFTは対価のある返礼品と判断されるか。
  • 返礼品のNFTにおいて、売買・譲渡できない物である場合(SBT :ソウルバウンドトークン)でも対価のある返礼品とみなされるか。
  • チャリティーNFTに二次流通が有った場合、得られれるロイヤリティは事業所得となるのか?
  • 暗号資産での寄付を受けた場合、寄付受領証明書をNFTで発行する事は可能か?
  • ブロックチェーン上で発行されたNFT寄付受領証明書は確定申告時の電子データとして利用しうるか?(現状は発行する団体側の手間が多く、電子データでの受領書発行がほとんど活用されていない現状を鑑み)